野宿の旅を続ける上での最後のコツをお話ししましょう。
実はコツとも言えないような単純なもので、それは無心で「一歩ずつ歩き続けること」です。
体力が持つ範囲で毎日こつこつと歩き、早朝になったら寝袋を出て、寝床をたたんで、痛む足をもみながら、また歩き出すのです。
ひとたび旅に出たならば、「なんでこんなことしてるんだろう」なんて悩んでも仕方ありません。中断する理由を探すより、何も考えずに歩き続けるほかはありません。一歩ずつ、ただ一歩ずつ。
気が遠くなるほど遠い町並み
山道などを歩いていると、見晴らしのいい景色を見下ろすことがあるでしょう。遙かに見える下界には、デパートなどが目につくかもしれません。それは工場かもしれませんし、住宅地かもしれません。
しかもその風景は、意外と近くに見えるものです。結構すぐにそこまで行けそうな気分にもなります。ところが、実際にはそこにたどり着くのは数時間後かもしれないのです。
おかしい。あのくらいの距離ならもうすぐたどり着いてもいいはずなのに。「あのお店くらいまで歩いたら、そろそろ寝る準備をしようか」そんなことを考えているけど、なぜかそこにたどり着かない。
日も暮れてきて、街の赤い光を追うのにも疲れてきます。
あるいはもっと単純に、まっすぐに伸びる直線の先の建物でも、同じような感覚を覚えることがあるかもしれません。
一歩歩けば、必ず一歩近づく
毎日野宿しながら旅をしていると、道に迷うこともあるかもしれません。地図を見ながらですら、そういうことはあるものです。
だとしても、ただ歩き続けるほかはありません。もし道を間違っていたら時間と体力をロスするから、時には歩かない方がましなこともあるんじゃないか。そう思うかもしれません。
ところがそうじゃない。
いま、自分が間違った道に入ってしまっていることに気づくためにも、進まなければ分からないのです。正しい道を選び直すためにも、まずは一歩ずつ歩くしかありません。
千里の道も一歩から
実際に歩いていると気休めにもならない言葉ですが、「千里の道も一歩から」を胸に留めて歩き続けてください。
どれほど遠くに見える町並みでも、ただただ歩き続けていればいつかは必ずたどり着きます。最初の頃はなかなか変わらない景色にもどかしい思いをしますが、慣れてきて、ただ一歩ずつ歩き続けていると、気づいたときには通り過ぎているようになります。
これらの記事が、これから野宿の旅をしてみようという人たちにとっての参考になれば幸いです。無事に旅を終えて、ぜひ語り草にしてください。